地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所

キュレーション

施設紹介

Facility

クリーンルーム/設備
  • クリーンルームは、エアフィルタ(HEPA)を介した空気循環をすることで、室内の浮遊塵を減らした部屋。ISOなどの規格により、浮遊塵のサイズや量に応じて清浄度のクラス分けがされています。私たちのクリーンルームはクラス1,000と10,000です。浮遊塵の低減だけでなく、温湿度調整(室温22±2℃、湿度50±10%)もしています。室温を維持することで装置類を安定させ、湿度を高く保つことで帯電による浮遊塵の付着の低減効果があります。さらにまた、クリーンルームの室圧を室外より高く(10パスカル以上)保っており、室外からの浮遊塵の侵入を防いでいます。*クラスは清浄度レベルを示し、クラス100は1ft3の体積中に含まれる>0.5 μm径の浮遊塵が100個未満、クラス1000は1000個未満、クラス10000は10000個未満であることを表します。クラス100、1000、10000はそれぞれ、ISO規格のクラス5、6、7相当とされています。

  • 加工洗浄室(クラス10000)

    ミクロトームやアクリル製窒素置換グローブボックス、超音波洗浄槽を備えています。いくつかの小部屋があり、局所排気とドラフトを備えた有機溶剤洗浄作業用の部屋、ベーキング用チャンバやその他の洗浄器具(CO2ブラスト、プラズマ、オゾン)を備えた部屋、帰還試料カプセルのアブレータを切削除去するためのフライス盤を備えた部屋があります。

  • 試料準備室(クラス1000)

    FE電子顕微鏡とFIBが設置されています。微粒子操作のためのマニピュレータを備えた光学顕微鏡もあります。酸やアルカリ洗浄を行える小部屋があります。

  • 電子顕微鏡室(クラス1000)

    FE電子顕微鏡、FTIR、ラマン分光器、XRD、光学顕微鏡、アクリル製とステンレス製の窒素置換グローブボックスを備えています。

  • 第2惑星試料処理室(クラス1000)

    床はグレーチング(金網)構造になっており、グレーチング下にゴミを落とすことで、歩行による床面からのゴミの巻き上げを防止しています。はやぶさ2試料用のクリーンチャンバを設置しています。

  • 惑星試料処理室(クラス1000)

    局所的にクラス100を実現しています。有機ケミカルフィルタをもち、ハロゲン、硫化物、窒化物、ボロンやボロン化合物を低減させている。床はグレーチング構造になっており、歩行による床面からのゴミの巻き上げを防止しています。はやぶさ試料用のクリーンチャンバや有機物フリーのクリーンベンチを設置しています。

  • 一般実験室(非クリーンルーム)

    地球外試料キュレーションセンターには、クリーンルーム以外の実験室もあり、SEM、FIB-SEM、TEMなどの分析機器の他、岩石薄片を製作できる器具も装備しています。そのほかには、クリーンブースがあり、ブース内の顕微鏡とマニピュレータを用いて、微小試料の取扱いが可能です。

  • 第2惑星試料準備室(クラス1000)

    ツール整備や試料分析に利用できる汎用のクリーンルームです。2022年にクリーンルームエリアを拡張して新築したものです。現在は、FTIRとレーザーラマン分光高度計、微小資料を扱うためのツールや顕微鏡類を設置しています。

  • 第3惑星試料準備室(クラス1000)

    ツール整備や試料分析に利用できる汎用のクリーンルームです。2022年にクリーンルームエリアを拡張して新築したものです。現在は、X線CTスキャナーを設置しています。

  • 第3惑星試料処理室(クラス1000)

    NASAによるOSIRIS-REx帰還試料の一部を管理するクリーンチャンバを設置する予定です。「はやぶさ」や「はやぶさ2」用のクリーンルームと同様に、試料床はグレーチング(金網)構造としています。

  • 液化窒素コールドエバポレーター

    液化窒素コールドエバポレーターは、液体窒素の大型タンクであり、液体窒素を気化させて窒素ガスを供給するための設備です。惑星物質試料受入れ設備では、窒素ガスを常に消費します。これは主に、帰還試料を地球大気に触れさせないように窒素ガス雰囲気中で保管するためです。「はやぶさ」、「はやぶさ2」に続き、今後はNASAによるOSIRIS-REx帰還試料の一部を管理するため、従来の液体窒素LGC(タンク)運用からコールドエバポレーター運用に切り替えました。これにより、より多くの窒素を安定的に供給し、さらなる試料の受入れが可能となりました。なお、コールドエバポレーターから施設に供給される窒素ガスは、施設内の装置で精製(純化)して高純度の純度窒素ガスとしています。これは、試料の汚染を可能な限り避けるための考慮です。

クリーンチャンバ
  • クリーンチャンバとは、帰還試料の保管や取扱い作業のために製作された真空チャンバもしくは窒素雰囲気のグローブボックスの呼び名です。帰還試料は、地球大気や塵などによる物質変化や汚染(コンタミネーション)を避けるために、外界から隔離された環境で取り扱う必要があります。
    クリーンチャンバの基本材質は、ステンレス(SUS304)です。室内に面する箇所は鏡面研磨(複合電解研磨)加工をしています。真空チャンバとしては高真空(1E-8~1E-6 Pa)の性能を持ち、窒素雰囲気グローブボックスとしては、大気中の酸素や水分を可能な限り除去した高純度窒素を利用しています(室内の露点温度 -80~-100℃dpw)。
    「はやぶさ」用と「はやぶさ2」用のクリーンチャンバがあり、それぞれ2台、5台のクリーンチャンバ連結された構成を持ちます。

  • 「はやぶさ」用クリーンチャンバ第1室(CC1)

    「はやぶさ」帰還試料受入れ当時、サンプルコンテナを導入して真空雰囲気下で開封しました。長作動距離の顕微鏡も装備しており、開封後にコンテナ内の観察も行いました。高真空を保つ小部屋があり、現在もサンプルコンテナを保管しています。サンプルキャッチャの取り出し以降は、窒素雰囲気下で試料を安定して保管するために利用しています。

  • 「はやぶさ」用クリーンチャンバ第2室(CC2)

    第1室と連結する窒素雰囲気のグローブボックスです。「はやぶさ」サンプルの取扱いに利用されており、室内には顕微鏡や静電制御マニピュレータを設置しています。実際には利用されませんでしたが、試料受入れ時に様々な対応ができるように、秤量装置への連結や試料を石英アンプルに封止する機構など、様々な機能を持っています。

  • 「はやぶさ2」用クリーンチャンバ第3-1室および3-2室(CC3-1, CC3-2)

    第3-1室は「はやぶさ2」サンプルコンテナを導入して真空雰囲気下で開封する機能を持ちます。第3-2室は、真空下でサンプルキャッチャから試料の一部を回収する機能を持ちます。真空雰囲気下でのチャンバ内物品操作は、チャンバが備える直線導入機やトランスファーロッドを用います。

  • 「はやぶさ2」用クリーンチャンバ第3-3室(CC3-3)

    第3-2室と連結されており、サンプルキャッチャを真空雰囲気下で受け取ることができます。受け取り後は窒素雰囲気のグローブボックスとして、サンプルを取り扱います。またCC3-3には赤外分光分析(MicrOmega)用の小型チャンバが接続されています。

  • 「はやぶさ2」用クリーンチャンバ第4-1室および4-2室(CC4-1, CC4-2)

    第4-1室は、第3-3室と連結する窒素雰囲気のグローブボックスです。「はやぶさ」用の第2室をモデルにされており、広い室内に大型装置を持ち込んで試料を取扱うことが可能です。第4-2室は天面に大きな窓を持ち、試料の観察に適しています。光学顕微鏡による撮影や秤量も行います。また第4-2室には赤外分光分析(FT-IR)用の小型チャンバが接続可能です。

機器準備や洗浄に関する装置
  • レーザープラー(Model P-2000)

    静電制御マニピュレータの石英針を製作するための装置。

  • 超音波洗浄機(PhenixII、Quava)

    試料取扱い器具洗浄用の装置。周波数が異なる数種の洗浄槽(38 kHz、950 kHz)を所有しています。超純水を溢水(オーバーフロー)させながら洗浄することが可能です。

  • ドライアイスブラスト洗浄機(QuickSnow)

    器具表面を清浄にするための装置。二酸化炭素ガスから微小なドライアイスの粒を精製し、器具表面に吹き付けることで、付着した塵を弾き飛ばします。

  • 大気圧プラズマ洗浄機(Plasmabeam)

    器具表面を清浄にするための装置。プラズマの高温により器具表面の有機物を焼却除去します。

  • 紫外線オゾン洗浄装置(UV253S)

    器具表面を清浄にするための装置。器具表面の有機物質を分解除去します。

  • クリーンエバポレータ

    器具洗浄の際に、酸やアルカリを煮沸する装置。

  • ドラフトチャンバ

    器具洗浄の際に、有機溶剤もしくは酸、アルカリを利用できる装置

  • クリーン乾燥機(PC2-1014-DRYER)

    洗浄後の器具を乾燥する装置。HEPAフィルタにより清浄化した空気を高温でブローできる。

  • 真空ベーク炉(MB07-10020C)

    器具を清浄にするための装置。クリーンチャンバの真空や高純度の窒素雰囲気下で器具を扱う場合、器具表面の付着水分が蒸発したり、素材自身から揮発性ガスが放出されることがあり、試料汚染の要因となります。そういった問題の対処として、ある種の器具は、クリーンチャンバ搬入事前に真空下の高温で長時間焼きだし(ベーキング)しています。

  • 窒素雰囲気デシケータ

    試料取扱い器具や容器を窒素雰囲気下で保管するための容器。

試料を取り扱うための装置
  • ステンレス製窒素雰囲気グローブボックス

    地球外物質を取り扱うための窒素雰囲気グローブボックス。ステンレス製。

  • アクリル製窒素雰囲気グローブボックス

    「はやぶさ」試料をクリーンチャンバ外で保管するための窒素雰囲気グローブボックス。アクリル製。「はやぶさ」試料の他に、顕微鏡とマニピュレータを備えたグローブボックスもあり、一般の地球外物質を取り扱うことができます。

  • 有機物フリー・クリーンベンチ(VS1305LS)

    クリーンチャンバ外で試料を取り扱うための装置。HEPAフィルタを介した正常な空気をコントロールし、浮遊塵の少ない環境下で試料を取り扱うことができます。また、装置から発生する有機物が試料を汚染させないために、素材はステンレス製。

分析や加工をする装置
  • 電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)(S-4300SE/N、SU6600)
    エネルギー分散型X線分析装置(EDS)
    電子線後方散乱回折分析装置(EBSD)

    主には帰還試料の初期記載に利用する装置です。クリーンルーム内に2台所有しており、オックスフォード社のEDSやEBSDを備えています。キュレーションセンターでは、帰還試料を大気に触れさせないように、試料交換室には高純度窒素を導入でき、密閉容器を開封できる仕様。

  • X線回折分析装置(XRD、RINT Rapid 191R)
  • 赤外顕微鏡+フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR、IRT-5000 + FT/IR 6100)
  • レーザーラマン分光光度計(Raman、NRS-5100)
  • 透過電子顕微鏡(TEM、JEM-1400Plus)
  • 集束イオンビーム/走査型電子顕微鏡複合装置、トリプルビーム装置(FIB-SEM、NX2000)
  • 電解放出型電子走査マイクロアナライザー(FE-EPMA)(JXA-iHP200F)
    軟X線分光器(SXES)

    帰還試料や隕石の分析に利用する装置です。収束した電子ビームにより1 μm以下の宇宙風化や微細な組織観察が可能です。波長分散型(WDS)とエネルギー分散型(EDS)のX線分析装置により、物質の構成元素や化合物の濃度、分布状態などの情報が得られます。また、軟X線分光器(SXES)が搭載されており、リチウム(Li)などの軽元素が検出可能で、元素の化学結合状態に関する情報も得られます。

  • ウルトラミクロトーム(EM UC7)

    光学顕微鏡下で微粒子を切断加工するための装置です。

  • X線CTスキャナー(ブルカー社SKYSCAN 1272 CMOS Edition)

    小型で高分解能の卓上X線CTスキャナーで、試料の内部構造を非破壊で測定することができます。最高分解能は1マイクロメートル未満で、およそ高さ100 mm、直径75 mmの円柱までの試料を細かい解像力で観察可能です。

  • ICP質量分析計とガス試料導入装置
    (アジレント社8900 ICP-QQQ、イアス社GED、イアス社MSAG)

    クリーンルームやクリーンチャンバの環境分析と試料の化学分析を行う装置です。8900 ICP-QQQはトリプル四重極の質量分析計で干渉イオンの除去やナノ粒子分析が期待される装置です。前処理装置として、導入系に気体中金属微粒子導入システム(GAS Exchange Device; GED)を備えました。GEDにより捕集した雰囲気をICP-MSに導入することが可能で、雰囲気中の金属濃度の評価が簡単かつ高感度で実施可能です。標準溶液の導入にはごく少量の溶液をエアロゾル化して安定供給できる金属標準エアロゾル発生ユニット(Metal Standard Aerosol Generation ; MSAG)を用います。

クリーンチャンバに接続する分析機器
  • マイクロオメガ(MicrOmega)

    クリーンチャンバ内試料を赤外分光分析するための装置。第3-3室に接続されています。探査機「はやぶさ2」によるリュウグウ表面の分析結果と、本装置での帰還試料の分析比較が期待されています。

  • 赤外顕微鏡+フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)

    クリーンチャンバ内試料を赤外分光分析するための装置。第4-2室に接続可能です。探査機「はやぶさ2」によるリュウグウ表面の分析結果と、本装置での帰還試料の分析比較が期待されています。

  • 大気圧イオン化質量分析計(API-MS、UG-510P/APIMS-200)

    クリーンチャンバ内雰囲気の環境を評価するための装置。「はやぶさ」用と「はやぶさ2」用の2台を所有しており、それぞれのクリーンチャンバと配管接続されています。質量数3から200までを高感度で検知でき、主には水、酸素、二酸化炭素、メタンガスをppbレベルで計測しています。

その他の分析装置
  • 同位体比質量分析計(IR-MS、DELTA V ADVANTAGE)

    水素、窒素、酸素や二酸化炭素を高精度分析できる安定同位体比質量分析計。地球外物質研究グループでは、惑星探査機の搭載機器として、地球外惑星大気の同位体比を高感度で分析できる装置の開発検討をしています。

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