地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所

LPSC2026参加報告 ― Bennu・Ryugu試料研究の最新成果と将来試料に向けたキュレーション技術の検討

2026年3月16日~20日にかけて、米国テキサス州ヒューストン郊外のウッドランドにて、第57回月惑星科学会議(Lunar and Planetary Science Conference 2026; LPSC2026)が開催されました。小惑星Bennu試料の帰還から約2年半が経過し、分析結果が本格的に報告され始めた中、Ryugu試料との比較を含めた研究発表が数多く報告されました。両小惑星の起源や進化を理解するため、同位体組成、鉱物学、水質変成、有機物、内部構造、表面プロセスといった多様な観点からの分析結果が提示されました。Bennu試料がRyugu試料やCIコンドライトと共通する特徴を持つ一方で、試料内の不均質性や揮発性成分の分布に違いがあることが示されました。このことから、両者が類似した特徴を持ちながらも、必ずしも同一の進化史を辿ってきたわけではない可能性が改めて示唆されています。

ASRG(地球外物質研究グループ)からも2件のポスター発表を行いました。主任研究開発員の矢田からは、Itokawa、Ryugu、Bennuと続いてきたJAXAにおける地球外試料キュレーションのこれまでの取り組みと現状について発表しました。複数の小惑星帰還試料の解析を通じて明らかになってきた知見や、国際公募研究の状況について紹介しました。将来ミッションである火星衛星探査計画(MMX)やアルテミス計画に向けた準備状況についても報告し、初の火星圏からのサンプルリターンを目指すMMXには、特に大きな関心が寄せられていました。研究開発員の川﨑からは、アルテミス計画や将来のサンプルリターンミッションを見据えた低温惑星試料キュレーションの検討状況について報告しました。揮発性成分や氷を含む試料を想定した低温環境下での取り扱い・保管技術は、月・火星、さらには外惑星圏探査において不可欠な要素です。実現に向けた施設、ハンドリング技術、記載技術のコンセプトやその技術的課題について、国内外の科学者・技術者と議論を行い、今後の検討に向けた多くのヒントを得ることができました。

会議全体を通して、月・火星探査に関するセッションが数多く設けられており、アルテミス計画以降の月科学や、将来の火星探査に向けた地質学・物質科学的研究が活発に議論されていました。「アルテミス計画」や「月から火星へ(Moon to Mars)」という流れが、構想段階から本格的な実証フェーズへと移行しつつあることを実感しました。月・火星に関するキュレーションの重要性も改めて認識する機会となり、まずはJAXA主導のMMXに関する準備を、世界からの期待に応えられるよう着実に進めていきたいと思いました。

太陽系探査と試料科学の最前線を肌で感じることができた5日間でした。今回のLPSC2026で得られた知見や議論を、今後の研究・技術開発およびキュレーション活動に活かしていきたいと考えています。(文・川﨑研究開発員)

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