【研究成果】 JAXAにおけるOSIRIS-RExキュレーション
NASAのOSIRIS-RExミッションは、2023年9月にB型の地球近傍小惑星(101955)Bennuから約121.6gの試料の採取に成功し、地球に持ち帰りました。地球に戻った試料はNASAのジョンソンスペースセンターに運ばれ、ほとんどのサンプルがそこで保管および取り扱われています。2024年8月22日に、Bennu試料の0.5重量%(0.663グラム)およびBennuの表面から収集した試料が付着しているコンタクトパッドが、NASAとJAXA間のMOUおよびLetter of Agreementに基づき、NASAからJAXAに受け渡されました。
相模原にある地球外試料キュレーションセンター(ESCuC)でBennu試料を管理するために、クリーンルーム内にクリーンチャンバと呼ばれる2台の窒素ガス置換式グローブボックスを準備しました。これらのクリーンチャンバ内で、Bennu試料の“きれい(pristine)さ”を保ちながら管理を行います。同時に、非破壊分析を実施し、二つの小惑星試料間の比較研究を行うために、小惑星リュウグウで使用されたものと同等の機器を準備しました。また、Bennu試料のキュレーションにおける新たな取り組みとして、小さな試料をコンタクトパッドから取り出すためのグローブボックスも準備しました。Bennuキュレーションは主にはやぶさ2のキュレーションを基にデザインされつつも、はやぶさ2のキュレーションから得た学びもBennuのキュレーション設計に取り入れられました。本論文では、はやぶさ2のキュレーションとの違いを中心に、Bennuのキュレーション準備について述べました。主な内容は、クリーンルームおよびクリーンチャンバの設計と建設、環境モニタリング、ハンドリングツールと試料移送容器の開発、試料の分析、カタログ作成、今後の計画です。
<論文著者からひとこと>
NASAからJAXAへの試料受け取りの施設準備(OSIRIS-RExのクリーンルーム、クリーンチャンバ、および機器)だけでなく、NASAのキュレーターと協力し、輸送容器にJAXAの容器を組み込み、輸送中の試料の “きれい(pristine)” な状態を維持する容器も準備しました。これらの協力によって、JAXAのOSIRIS-RExサンプルキュレーションの成功にたどりつくことができました。Bennu試料を受け取った時は、すばらしい瞬間でした!
発表論文
掲載誌: Meteoritics & Planetary Science
タイトル: JAXA curation for Bennu samples returned by the NASA's OSIRIS-REx mission
著者: Tahara, R. et al.
DOI: 10.1111/maps.70066
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/maps.70066
論文公開日: 2025年10月23日