MetSoc2025 (国際隕石学会) への参加:ASRGからも6件発表
7月14日から18日までの5日間にわたって、西オーストラリアの州都パースで国際隕石学会 (Meteoritical Society) が開催されました。会場は港に程近い臨海部にある展示場で、日本で言うとパシフィコ横浜が近いでしょうか。盛夏を目前に控えた日本とは裏腹に、真冬に差し掛かろうというオーストラリアの冷えた空気を暖めるホットな研究成果が数多く発表されました。
帰還試料のセッションでは、私たち地球外物質研究グループ(ASRG)の手元から各研究者のもとへと旅立った小惑星リュウグウの試料について、分光学や岩石学、同位体化学といったさまざまな観点からの研究成果が報告されました。さらに、NASAの探査機オサイリス・レックス (OSIRIS-REx) が持ち帰った小惑星Bennu(ベヌー)試料とリュウグウ試料の比較や、地球に飛来した隕石の一種であるCIコンドライトとの比較が行われ、それらが基本的には類似していることが再確認されました。なかでも興味深かったのは、昨年6月にモロッコで発見されたOued Chebeika 002というCIコンドライトとの比較です。この隕石は風化度や変質度が低いものの、リュウグウやベヌーに匹敵するほどではない可能性が議論されていました。そのほかにも、隕石学会というだけあってコンドライトのみならず火星などの分化天体からの隕石の研究、さらには地球の海の起源を追究する発表まで幅広い成果が報告されました。
ASRGからは6名が参加し、それぞれ発表および議論を行いました。具体的には、リュウグウ試料中の有機物、ベヌー試料の形状、赤外分光特性といった科学的な内容に加え、これまでとこれからのJAXAにおけるキュレーション活動およびサイエンスコミュニケーション活動について報告をしました。
暑さが苦手な私にとって、冬のパースは理想的な環境で、頭も冴えていた気がします。酷暑と文字通り桁違いの人口密度を誇る我が国への帰還に躊躇いを覚えつつも、現地で交わした議論を形にすべく、帰国の途につきました。(文・櫻井研究開発員)
