【研究成果】 太陽系最古の物質のトモグラフィ:粒子は円盤で破壊を経験
46億年前の太陽系に存在したμmからmmサイズの粒子は、惑星の元となった材料と言われており、どうして太陽系に多数の惑星が出来たのかを知るのに重要です。粒子は合体成長して惑星サイズまで大きくなると考えられていますが、近年では逆に粒子が破壊され、成長を阻害されることも理論的に予想されていました。しかし、隕石などから直接的な証拠は得られていませんでした。
我々は粒子の破壊の証拠を得るために、太陽系の中でも最も初期に形成した凝縮物(calcium-aluminum-rich inclusion; 略してCAIと呼ぶ)に注目し、研削型トモグラフィ法という新手法を使ってCAI粒子を三次元的に可視化しました。その結果、CAIはその形状と表面の色の多様性から、粒子が形成してから破壊を受けていることが明らかになりました(図)。
本手法はデジタルカメラで撮影した隕石の断面像を再構成して三次元化しており、我々が目で見た色に最も近く、更にμmスケールの解像度で粒子の形状・構造を表すことに成功しています。今後、リターンサンプルを非破壊に観察する際の参考データとしても有用になるでしょう。

<論文著者からひとこと>
本研究はTansa-X(宇宙探査イノベーションハブ)を通した北海道大学との連携をきっかけに、2020年から着想・分析を開始しました。ASRGではSEM-EDSを活用させて頂き、トモグラフィ解析のための参考データが得られました。重要な課題に対して独自のアプローチが成功した達成感と、新たな科学領域に踏み出した高揚感を感じています。

深井 稜汰 特任助教
発表論文
掲載誌: Icarus
タイトル: The bright-field grinding tomography of coarse-grained calcium‑aluminum-rich inclusions in the Allende meteorite
著者: Fukai, R. et al.
DOI: 10.1016/j.icarus.2025.116648
URL: https://doi.org/10.1016/j.icarus.2025.116648
論文公開日: 2025年5月12日