地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所

LPSC(月惑星会議)での小惑星Ryugu-Bennu試料の研究成果報告と将来ミッション

3月10日~14日にかけて米国テキサス州ヒューストン郊外のウッドランドにて、第56回月惑星科学会議(Lunar and Planetary Science Conference)が開催されました。2023年9月の探査機OSIRIS-REx(オシリスレックスまたはオサイリスレックス)による小惑星Bennu(ベヌー)試料の帰還から1年以上が経ち、試料の分析結果に関する論文が出版され始めたこともあり、昨年より詳細な分析結果についての研究成果が発表され大変盛況でした。特にBennu母天体における塩水の蒸発過程についての報告や、アミノ酸や核酸塩基などの生命に関連する物質に関する報告について、活発な議論が行われました。

また、リュウグウ試料の新たな研究成果報告や、Bennu試料との比較研究結果についても数多くの発表がありました。リュウグウ試料分析に用いる赤外分光顕微鏡マイクロオメガ(MicrOmega)を用いた分析について、JAXAキュレーションと技術協力しているIAS(フランス国立宇宙研究センター宇宙天体物理学研究所)から、リュウグウ試料で発見されたHAMP (Hydrated Ammonium-Magnesium-Phosphorous-Rich) 粒子の分析結果が報告されました。リュウグウ試料とBennu試料は、よく似た岩石鉱物学的特徴を持っている一方で、Bennu試料はアンモニアやリン酸塩に富んでいるという特徴があります。HAMP粒子は、リュウグウ試料の中でこれらの成分が濃集している特異な粒子であり、二つの帰還試料の比較研究において、重要な粒子と考えられます。

JAXAキュレーションからも、昨年8月にBennu試料を受け入れてからこれまで行ってきた初期記載分析結果について、ポスター発表を行いました。特にJAXAは世界に先駆けてBennu試料の分光データを多く取得しており、その結果について多くの研究者と活発な意見交換が行われました。

小惑星探査の他にも、将来の火星探査ミッションに向けた火星の地質学・物質科学的研究に関するセッションが多く見られ、大変な盛り上がりを見せていました。JAXA主導で準備を進めている火星衛星探査計画(MMX)も、JAXAキュレーションとして引き続き尽力していく気持ちが高まりました。太陽系探査の最前線を肌で感じた5日間となりました。

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