第84回国際隕石学会への参加 ―トピックはやっぱりOSIRIS-REx帰還試料研究
去る7月29日〜8月2日にベルギー・ブリュッセルにおいて第84回国際隕石学会が開催されました。学会会場であるベルギー王立科学アカデミーの重厚な歴史を感じる建物において、最新の帰還試料・隕石研究の発表・議論が行われました。
今年の一番のトピックは、昨年9月の帰還後、隕石学会で初めての発表が行われるOSIRIS-REx帰還試料研究についてで、初日の丸一日と2日目の午前にかけて、数多くの研究成果が発表されました。
小惑星ベヌーは当初、探査機のデータから推定された内容と異なり、小惑星リュウグウと同じCIコンドライト隕石と最も似ていることや、しかしリュウグウと異なってリン酸塩鉱物に富んでおり、有機物がリュウグウが硫黄成分に富んでいるのに対してベンヌの有機物は窒素成分に富んでいる、などの違いも見られ、初期太陽系外縁で形成された始源小天体がバリエーションに富んでいたことが分かってきました。
帰還試料研究だけでなく、既存の隕石研究も新たな視点での研究が多く発表され、活発な議論が行われました。ASRGからも、この夏にNASAからJAXAへ配分されるOSIRIS-REx帰還試料の受入準備状況について矢田主任研究開発員が発表を行いました。アルテミス計画、MMXなど将来サンプルリターンミッションのキュレーションに関する発表と併せて、今後の帰還試料キュレーションの課題(例えば、低温保管、磁気汚染防止など)について、広く議論が行われました。
近年ヨーロッパは夏の暑さが厳しくなってきており、日によってはエアコンの整備されていない会場内は暑くなり、首から提げている名札を団扇代わりに仰ぐ姿も多く見られました。とはいえ、日本の夏に比べればずっと涼しく(30°Cを超えることはない)、猛暑の日本に帰るのが憂鬱で、滞在を延ばしたくなる心持ちでした。