地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所

LPSC(月惑星科学会議)で知る惑星探査の最前線―小惑星リュウグウ、Bennu試料の最新の研究成果の報告など

 3月11日〜15日にかけて米国テキサス州ヒューストン郊外のウッドランドにて、第55回月惑星科学会議(Lunar and Planetary Science Conference)が開催されました。NASAの小惑星探査機OSIRIS-RExが小惑星Bennu試料を地球に帰還させてから初めての月惑星科学会議となり、該当セッションは立ち見も出る盛況でした。

 リュウグウ試料分析成果のセッション(Analysis of Ryugu Samples and Aqueous Processes on Chondrite Bodies)では、例えば、JAXAキュレーションが初期記載として行うMicrOmegaで取得した赤外反射スペクトル解析により、最初のタッチダウンで採集された粒子は、人工衝突クレーター近くで採集した2回目のものより宇宙風化のバリエーション豊かであることが報告されました。また、JAXAが行っている研究公募(AO)にて配分したリュウグウ試料から、原始太陽系の消滅核種であるヨウ素129の痕跡がキセノン同位体分析で検出され、太陽系最古の固体物質であるCAI形成後、900万年という年代を示すことなどが報告されました。

 小惑星Bennu試料分析成果のセッション(Special Session: To Bennu and Back)では、Bennu試料が鉱物・化学的にはリュウグウと同じ始源的なCIコンドライト隕石と近いものの、より有機物に富み、何故か多くのマグネシウムリン酸塩鉱物を含み、無水ケイ酸塩鉱物がより多く含まれるなど、違いがあることが報告されました。今後、更に詳細な比較研究が進むことが期待されます。

 はやぶさ2、OSIRIS-RExの他にも小惑星Didymos(ディディモス)の衛星に探査機を衝突させた探査機DARTやその観測ミッションである探査機Hera(ヘラ)、最終的に木星トロヤ群小惑星にランデブーを目指す探査機Lucy(最初のフライバイ対象天体である小惑星Dinkinesh(ディンキネシュ)の衛星が実は小惑星イトカワと同じ接触2重小惑星だった!)などの数々の小惑星ミッションの話題がありました。また、今年日本で初めて月面着陸に成功した小型月着陸実証機SLIMや、来年打ち上げ予定のArtemis(アルテミス)、探査機VIPER(ヴァイパー)などの月ミッション、そして火星探査車Perseverance(パーシヴィアランス)による試料採集の進捗、今年打ち上げ予定の木星氷衛星エウロパで生命の痕跡を探す探査機Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)など、JAXAもかかわりのある衛星や惑星のミッションについても多くの成果・計画が報告され、惑星探査の最前線を肌で感じた5日間でした。

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