地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所

【研究成果】 表面組織でリュウグウ試料を分類

 地球外物質研究グループは、キュレーション活動の一環として、世界で初めてリュウグウ試料の分類を試みました。

 1mm以上のリュウグウ試料205個(全重量の約25%)を、光学顕微鏡撮像で得られた見た目の特徴にもとづいて4つのグループに分類しました。各グループの代表的な試料を用いて、電子顕微鏡による組織観察や、X線回折分析による構成鉱物の同定を行った結果、それぞれのグループの特徴が、宇宙風化(日焼け)や鉱物組成の違いを反映している可能性を示唆しました。

 試料の宇宙風化の差異は、その試料がリュウグウ母天体の最表層にどの程度留まっていたかを知る指標になります。C型小惑星への宇宙風化プロセスは未解明の部分が多く、リュウグウ試料の帰還によって今まさに分析研究が進められているところです。鉱物組成の違いは、その試料がリュウグウ母天体でどのような環境にあったかを再現する際の手掛かりとなります。我々は本研究の成果が、国際公募研究等で研究者が試料を選ぶ際のカギとなり、今後のリュウグウ試料研究の推進力になればと期待しています。

表面組織でリュウグウ試料を分類
(A)黒っぽいグループ。リュウグウ試料の中で一番多いタイプ。(A0042), (B)光沢面を持つグループ(C0094), (C)やや明るい色のグループ(A0017), (D)300µm以上の大きな白い部分を含むグループ(C0041)

リュウグウ試料のウェブカタログ(https://darts.isas.jaxa.jp/curation/hayabusa2/)でも様々な試料を見ることができます。

<論文著者からひとこと>
この研究は、多数の試料を研究対象として扱うことができる、まさにキュレーションならではの研究です。私自身もリュウグウ粒子1粒毎のピックアップに携わりましたが、作業の中で「あれ、これは何だか白っぽいな」「ピカピカ光っている粒子があった」等、作業者の間で、見た目の多様性が割と早い段階で議論されていました。そのような見た目の違いを作る原因の一部を本研究で明らかにすることができ、嬉しく思います。

中藤 亜衣子 元研究開発員
中藤 亜衣子 元研究開発員

発表論文

掲載誌: Earth, Planets and Space
タイトル: Variations of the surface characteristics of Ryugu returned samples
著者: Nakato, A. et al.
DOI: 10.1186/s40623-022-01754-8
URL: https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-022-01754-8
論文公開日: 2023年3月28日(日本時間)

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