地球外物質研究グループ|宇宙科学研究所

【研究成果】 赤外分光測定からわかったリュウグウ試料の均質性

 地球外物質研究グループは、赤外顕微鏡及びフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて100個以上のリュウグウ試料表面の分析を行いました。

 粒子試料及び集合体試料から得られたスペクトルを統計解析した結果、本研究で用いた波長域(1〜5μm)の赤外分光により検出可能な成分(反射率の違い、含水鉱物・炭酸塩鉱物・有機物の有無)で見ると、リュウグウを構成する物質は非常に均質であることを明らかにしました。

 詳細に見ると、赤外光の反射率が低くOH基(結晶水)の深い赤外吸収を持つケイ酸塩鉱物が大部分を占め、稀に数百μm以上の白色の炭酸塩鉱物や水酸化物粒子、金属光沢を有する硫化鉱物などを含むことが分かりました。

表面組織でリュウグウ試料を分類
a: 主成分分析により均質なグループ(波線内)に含まれる試料の平均スペクトル。ケイ酸塩鉱物が持つOH基の深い吸収バンドを持つ。 b-d: 粒子試料で稀に検出された特徴的なスペクトル。bは大きな炭酸塩鉱物(C0041b)、c・dは硫化鉱物(C0079、A0038)。

リュウグウ試料のウェブカタログ(https://darts.isas.jaxa.jp/app/curation/ryugu/)でも様々な試料を見ることができます。

<論文著者からひとこと>
今回の論文で紹介している赤外分光分析は、試料にダメージを与えることなくその特徴をある程度とらえることができる測定方法です(X線や紫外線も試料を傷つけることがあります)。JAXAキュレーションでは、宇宙から持って帰ってきた貴重な試料を、新鮮なまま、かつできるだけ多くの情報を付けて、これから研究を行う研究者に提供できるよう努めています。

畠田 健太朗さん(技術支援)
地球外物質研究グループ
畠田 健太朗さん(技術支援)
(c) Noriko Hayashi, National Geographic

発表論文

掲載誌: Earth, Planets and Space
タイトル: Homogeneity and heterogeneity in near-infrared FTIR spectra of Ryugu returned samples
著者: Hatakeda, K. et al.
DOI: 10.1186/s40623-023-01784-w
URL: https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-023-01784-w
論文公開日: 2023年3月28日(日本時間)

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