はやぶさ2にむけて

 2014年12月3日に打ち上げられた「はやぶさ2」は、C型小惑星「リュウグウ(162173 Ryugu)」をターゲットとしています。C型小惑星は、比較的暗い見た目をしており、この特徴は炭素の含有量が高い炭素質コンドライト隕石と類似しています。C型小惑星の「C」は英語で「炭素質」を意味するcarbonaceousの頭文字に由来するものです。

 C型小惑星起源の炭素質コンドライトは、イトカワのようなS型小惑星を起源とする普通コンドライトとは異なり、小惑星での大規模な熱変成を受けておらず、太陽系が形成した当時の始原的な有機物や水を保存していると考えられています。このような有機物や水は、地球の海の水や私たちの体をつくる有機物の素となったと言われています。従って、C型小惑星の物質を直接手にすることができるはやぶさ2ミッションは、太陽系がどのように生まれ、どのように進化してきたのか、また私達のような地球生命の原材料が宇宙空間でどのように作られ、変化してきたのかについて、知ることができる貴重な機会です。

はやぶさ2とリュウグウはやぶさ2の航路

 しかし、現在の地球には多くの水や有機物がすでに存在しているため、地球上で発見される炭素質コンドライトの場合、この影響を完全に取り除き、小惑星本来の水や有機物の情報を得ることは大変困難です。はやぶさ2帰還試料についても同じように、せっかく宇宙空間から直接小惑星物質を採取してきても、地球の大気や水や有機物によって、簡単に汚染されてしまいます。

 そこで、キュレーションでは、はやぶさ2帰還試料に向けて、地上物質の汚染を最小限化するための施設・設備の準備と、試料取り扱い技術の確立に日々励んでいます。具体的には、以下の様なことを行っています。

  1. はやぶさ2取り付け部品等の事前洗浄を行う
  2. 汚染可能性のある物質を事前にモニターする
  3. 地球大気にできるだけ曝さない環境で分析を行う
  4. 地球有機物にできるだけ接触させない環境で分析を行う
  5. 試料を出来るだけ破壊しない手法で分析を行う

 「はやぶさ」では、0.5 mm以下の非常に細粒な粒子がほとんどであったのに対し、「はやぶさ2」ではミリメートルサイズの試料の回収が予定されています。また上述のように地球上にも多く存在する水や有機物を含む物質であることも大きな違いです。キュレーションでは「はやぶさ」で培った微小試料取り扱いの経験を生かしながら、より大きなサイズの試料を非汚染・非破壊で取り扱う準備を念入りに進めています。